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擁壁工事の現場で思った事

このページをご覧になっている方々にとっての関心事は、身近な土地の境界問題や測量、登記の事 そういった事について専門家の知見を確認する目的で閲覧している方々だと認識しています。

ですから、測量、登記に直接関係ない土木工事についての技術的、専門的な記事は期待していないと思いますが、当事務所の特徴として個人が必要とする土木工事許認可の円滑な取得を挙げさせていただいております。
そして、それを可能とする要因として自社設計、自社監理を謳っております。

そこで、今回、建築基準法に基づく工作物(擁壁)の確認申請に関する工事現場がありましたので情報提供いたします。
Blogなので、現場で思いついたことを記事にしましたので、技術的、論理的な報告ではありませんが、個人が必要とする擁壁工事についての概要が掴めればと思っています。

発端は個人住宅の裏側が崖地(崖の下側に住宅)となっている事から、豪雨災害等による崖崩れを心配され、擁壁の設置を考えられた事でした。
崖の現況から判断して、必要な擁壁の高さは2mを超えるため、建築基準法に規定される工作物に当たり、設置する場合は「工作物の確認」と言った建築基準法上の手続きが必要でした。

手続きの詳細は省きますが、目的は住宅の安全です。手続きの円滑さも必要ですが、現場に即した最適な設計と施工が重要です。

現場に即した最適な設計とは、現地の地形や地質に応じて、最適コストの擁壁形状、コンクリート、鉄筋量等を計算により導き出すことです。

今回は、施主の希望もあり、擁壁形式を片持ちばり形式逆T型鉄筋コンクリート擁壁としました。

先ずは現地の地形、地質の把握が必要です。住宅背面は傾斜角50°高さ4m程度の崖面とその上から傾斜角10°程度の斜面が長く続く地形です。

見た目の土質は粘性土(関東ローム層)で、砂質土ではなさそうです。そのため50°の傾斜角でも崖は安定していました。

逆T型鉄筋コンクリ―擁壁の安定計算に必要な設計諸元の内、現地の土質によって変わるものは基礎地盤の地耐力、基礎地盤の内部摩擦角及び粘着力です。

今回は、崖面を一旦掘削し擁壁完了後に擁壁背面を埋め戻します。この掘削面の土質も安定計算に必要な設計諸元となります。

今回は基礎地盤、掘削背面ともに粘性土で、粘着力は土質条件の重要なファクターとなります。

他に擁壁材料の許容応力度や埋戻し土の質量等の情報も必要ですが、これらは設計条件のものを使用すればよい事なので、現位置試験の必要はありません。

今回の現場ですが、基礎地盤、掘削背面の状況は写真のとおり
典型的な関東ローム層で、現位置の平板載荷試験の結果、設計想定値70KN/㎡を十分満たす値が得られました。建築基準法で言う固いローム層100KN/㎡そのものです。

さて、本題ですが、擁壁の安定計算、構造計算、配置設計、構造設計の詳細に関しては省略しますが、施工が始まった現場で感じたことを報告します。

現場で感じたことは
施工しやすい設計であったか、もっと細かく言うと、組み立て易い配筋計画(配筋図)であったか、と言う事です。

設計段階で配筋図や鉄筋加工図、数量表等を作成しますが、配筋計画と構造計算と築造コストはリンクしています。

例えば、擁壁の厚さと、鉄筋の被り(鉄筋から擁壁外辺までの距離)の関係から主筋、配力筋の位置は色々考えさせられます。コストと施工しやすさに影響が出るからです。

W配筋の場合、主筋の外側に配力筋を配置する方が施工はし易そうですが、被りの関係で擁壁は厚くなります。
一方、配力筋を主筋の内側に配置する場合、擁壁の厚さは外側配置より薄くなりますが、施工し辛いのではないか等 施工手順を理解していないと判断し辛い事ではあります。

施工手順をある程度想定して、設計(配筋計画)しているつもりですが、現場監督に聞くと、設計者の意図に反して想定とは違った手順で施工しています。

結果的に設計図書通りに出来上がれば何ら問題はないのですが
此方としては、むしろ「目からうろこ」状態で、なるほどと思うことが多々ありました。

現場での経験が、次の設計に生かされてきます。そんなことを感じた現場でした。

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